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  ホーム >> frunブログ集 >> 【吉村昭「漂流」 細部の甘さ?】

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feed 【吉村昭「漂流」 細部の甘さ?】 (2013-4-5 20:32:13)
結局、キンドルでも吉村昭の殆どをダウンロードしてしまいました(^^;。勿論、有料です。


私に学生時代から圧倒的な影響を与えた氏の名作「漂流」ですが、キンドルで再度読み直しても、感動は深いです。

しかし、前々から思っている甘さというか疑問点をここに記します。



1.

文庫本P80で激しい時化で船が揺れて「火種も失った」とあります。それにより長平達は漂流中、米を炊けず、生米をかじるようになりますが、
P89において鳥島に上陸後、船が大波で破壊され、「船に乗せられていた・・火打ち石等を失ったことは痛手」とあります。
漂流中、火種は失っていなかったということ。

また島に上陸後に、船に積んであった米、火打ち石を始めとした道具類を持ち出していません。その後、波で揺れる船を岩陰で眺め、
次第に壊れていく様子を見ています。なぜ、持ち出さなかったのかでしょう。体力も相当落ちていたので、自身が上陸するのが精一杯だったということでしょうか?



2.

アホウドリが去る春から秋に戻ってくるまでアホウドリの干物を食べるわけですが、源右衛門がP123において
「一人、八十羽もあれば十分だろう」と、干物作業にとりかかります。一日一羽、食べていき、干物は尽きてしまいます。
約半年弱、渡り鳥はいないということを彼らは経験で知っているのに(本文に記載)、なぜ「八十羽で十分」と考えたのでしょうか?
半年弱なら、一人、その倍の約百五十羽は必要だったと思います。

ただ、干物だけを食べるという食生活は、危険だということを長平等は後に気づくのですけど。




3.

P197、儀三郎達が鳥島に上陸。長平は、アホウドリの大きな卵の殻に入れた雨水を彼らに提供します。
しかしP239、アホウドリの卵を茹でる場面で、儀三郎達は「卵のばけ物だ」と驚きます。既にP197の場面で卵の大きさを見ているはずなのに。




4.

塩を採取しようと海岸の岩のくぼみに付着した塩等を彼らは探しますが、そのようなことをしなくても、卵の殻に海水を
少し入れて蒸発するのを待ったり、あるいは儀三郎達は火打ち石を持ってきたのですから、海水を熱すれば容易に塩を採取出来たと思います。




5.

飲み水の安定供給に雨水を貯める池を作ります。卵の殻を水筒のように利用していた時は、砂塵を防ぐために蓋をしましたが、
池は対策無し。卵の時もそうですが、数日内ならまだしも、長期間、池の水をそのまま飲めたのか?
煮沸して飲んだのかもしれませんが、衛生面で疑問が残ります。




6.

舟を造るための釘の調達に、碇を熱し、そこに斧を当て、鉄片を得て釘を作りますが、そのようなことが出来るのでしょうか?
吉村のことですから、実際に可能なのか?いろいろ取材をしたかもしれませんが...。




7.

P384で「磯にはかなりの量の流木」とあります。吉村が終わりを急いだのか、と思います。
もう少し舟の完成までの期間をじっくり書いて欲しかったです。




8.

長平達、そして栄右衛門の各伝馬船は、島に着くや、波で原型を留めないほど壊れ、木片に化しています。
儀三郎達の伝馬船は流出。長平とは別の年代にこの島にやってきた者は伝馬船を修理し、脱出したと記載があります。
話を盛り上げるために、長平達の伝馬船等を破壊するしかないとして書き連ねたのでしょうか?




最近、アホウドリの移住計画で鳥島がTVでよく見かけるようになりました。島には一般人は上陸出来ないようですが、
八丈島から鳥島を周回するツアーのようなものが不定期にあるようです。料金不明ですけど。
一度、絶対、鳥島(ここでいう鳥島とは伊豆鳥島)をこの目で見てみたいと思っています。

映画化された「漂流」は原作とはだいぶ異なって残念ですが、長平役の北大路さんが、原作通り、アホウドリを本当に殴殺する場面にはびっくりしました。
今は絶対、許可されないですね。


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