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feed 【ザ・シンフォニカ 第61回定期演奏会を聴く】 (2017-2-20 8:07:30)

2017.2.19 すみだトリフォニーホール。午後2時開演

曲目 
ブラッハー 「パガニーニの主題」による変奏曲
ブルックナー 交響曲第5番(1878ハース版)

指揮:高関 健

コンサートミストレス:金坂 亜希

毎回ながら、素晴らしい演奏だった。

極端にいえば、ステージに団員達が登場してくるその顔つきを見ただけで、もう名演だと思ってしまった。
笑顔で登場してくる方も少なくないが、その笑顔の背景には、この数ヶ月、各団員が仕事や家のことで多忙の中、それを言い訳とせず、
時間を捻出し、黙々とこの2曲に対峙して頑張ってきたというそのオーラを感じたからだ。

指揮者が登場し、全員が起立した時、

「やれることはやってきた。私たちの音楽を聴いてください!」

という強いメッセージを感じた。

今回も早めに開場。ドア外にはシンフォニカの名札を着けたスタッフが何人もいて、整列の混乱は皆無。

数年前の文京シビックでの公演の開場直後、階段で不自由に待たされていた老夫婦に手をさしのべ、
誘導した茶髪のお兄さん団員を思い出す。このお兄さん、今回もストバイで頑張っていた。

ロビーに入るや、代表が入口付近で聴衆達に深々とお辞儀している姿を見かけ、声をかけた。演奏直前は楽屋で集中したいところだが、
シンフォニカの場合、演奏団員が何人もロビーで聴衆に対応している。
別に友人が来るので先に挨拶しておこう!といったものではなく、来た聴衆1人1人への感謝なのだ。


さて、演奏だが、Vnは対向配置。Cbは1stVn後方、Hnは右。Timpは中央。

1st:16人、2ndは13人。Vcは11人、Cbは8人・・弦の厚みを感じる。しかもオケ全体で賛助は数名だ。

対向配置は思った以上に相手が聞き取りにくく、大変らしいと言われる。
過去にいわゆる市民オケで対向配置による演奏を何回か聴いたことがあるが、1st、2ndが殆ど噛み合わず、苦笑しながら聴いたことがある。
やはり対向配置は、それなりのレヴェルの団体ではないと厳しいと思う。
今回のシンフォニカでは、事故らしい部分はなかった。また逆に対向によって、ブルックナーが新鮮に聞こえた。

コンミスは今回も見事であった。あの「英雄の生涯」定期の衝撃的なソロは今も私には強く心に残っている。
アマチュアであれほど芸術的なソロは聴いたことがない。この曲のソロ譜面を弾けるだけでもアマチュア奏者なら立派かと思うが、
彼女はそこに味付けをして、時には可憐に、また時には妖艶にソロを弾いていたのだ。彼女は一体、何者なのだ??と思ったほど。

今回も弾き方にクセがなく、中途半端な音大生より遙かに上手い。

しかも、コンミスとしての役割も見事だ。ステージに登場してくる時の歩き方、団を代表しての礼の仕方、
肝心な仕事であるオケのリード、その演奏姿勢、全てが秀逸。
高関さんの思い描く演奏をしっかり受け止め、団員に発信していたと思う。

ブラッハーの「パガニーニ」だが、冒頭の24番ソロは軽い感じで弾かれていた。
普通、アマオケで曲早々にソロがある場合は、着席しても、少し落ち着かないとか、ドキドキするものだ。
しかもパガニーニ24番だ。演奏前のお顔を凝視すると、別にそういう緊張さを感じなかった。そして本当にあっさりと弾いた!
個人的には、彼女の演奏で24曲聴いてみたかった。


演奏全体だが、この曲は変拍子もあるわ、またジャズ的な要素も多く、特に管楽器群は大変なのだが、そこはシンフォニカだ。
「ローマの祭り」を聴いた時に、このオケの管楽器奏者の能力に驚いたが、今回も同様。高い技量は維持され、また更に進化していることを感じた。

次にブルックナーだが、高関さんは、パウゼを少し長めに取り、じっくりと先へ進めていった。
この第5番は、「どソロ」があるパートが結構あるのだが、その部分で例えば、緊張で音が震えたり、あるいは音程が怪しかったり..
ということは殆ど無かった。

またブラッハーでも感じたし、過去の演奏でも感じるのだが、パート間での旋律の移動が、一直線だ。そこに寸分の狂いは無し。
バトンミスがない、鮮やかなリレーだ。

高関さんが軽く指示するだけで、主題が各パートを動いていく。

前にも書いたが、団員達は自分のパート譜面だけでなく、オケスコアをほぼ脳裏にたたき込んでいるのだろう。

第4楽章冒頭では、前楽章群の主題が回顧されるが、そこを高関さんは強く強調しているかのように見えた。
また全楽章に渡って、ファゴットの存在を強く感じた。ファゴット奏者達に失礼かもしれないが、一般にブルックナーでは
この楽器はあまり聞こえてこない。しかし、今回は弦、金管に埋もれることなく、聞こえてきた。

ラストは圧巻だ。それまでに金管は時に何度も強奏してきただけに、最後は唇がへばってしまうかも..と思ったのだが、
そのようなことはなかった。ホルンが破裂音のように応答する部分も圧巻。

高らかに奏でるトランペット、時にバリバリッと鳴るトロンボーン。金管に埋もれることなく、聞こえてくる弦楽器群!
どれもが私には心地よかった。チェロのトップ女性が髪をなびかせながら全身全霊で弾いている様子も迫力があった。

ステージの後方にはパイプオルガンがあるのだが、聴いていてなぜかこのオルガンが少しずつ客席に迫ってくるような大音響になった。

そしてティンパニの連打による圧倒的集結。非常に分析的な演奏でありながらも、快活さも感じたブルックナー第5番であった。


拍手はあと2秒我慢して欲しかった...。

依然として横綱級のアマオケであることは間違いなし。

厳しい合奏練習、セクション練習、また各練習後の反省、個人練習等を経ての今回の名演だと思う。仕事でストレス、
練習がなかなか出来ないストレス・・と嫌になってしまったこともあったと思うが、それを乗り越えての名演奏だ。
そこに私は強く惹かれる。プロオケでも音大オケでもない、人生の色を感じさせる真のアマチュアオーケストラ!!

団員募集は基本行っていないので団員の平均年齢は、恐らく50歳に近いと思う。
よくぞ、この年代まで第一線というか質の良い音楽を発信できているなと改めて感心する。今後も引き続き聴いていきたい。

ブルックナー前にトイレに行ったら、行列。しかも「アーノンクールの5番は・・」とか、
「ヲ」な話をしている方々がいたのはお約束か。

また第2楽章、第4楽章(前半)周辺で、膝の上で握っていたであろうカバン、プログラム解説等を、床に落とす音が何回か聞こえた(^^;)。
スマホの落下音らしいのも聞こえた。ブルックナー演奏会ではよくあることだ。全て床に置いて鑑賞すべきかと。

飴を食べる人、ニベアを塗る人、下品なクシャミをする人、財布から小銭を数え出す人..等は皆無。

さて、そろそろ、「トゥランガリーラ」の登場を待ちたい。高関さんの指揮で望む。
数年前に高関さんが札幌交響楽団定期で取り上げたのだが、非常に若々しい演奏だった。

さぁ新響が先か?シンフォニカか?


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