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サンダカン八番娼館 (2016-1-3 8:10:57)
これを元にした映画があったのは、うっすら記憶にあったのですが、FBでこの本のことを取り上げていた人がいたので借りてみました。
貧困のために海外へ渡り売春婦となった女性達(からゆきさん)のことを研究している著者が、取材旅行中に偶然出会った、おサキさんの住むあばら屋で3週間寝食を共にし、聞き出したおサキさんの回想が中心。
目的を隠しての取材だったので録音や聞き書きが出来なかったこと 昔のことであること、本人及び取材する側の記憶違いもあったかもしれないです。
早くに両親を亡くし兄弟だけでの極貧生活の中で生きるために、10歳のおサキさんが、それがどういうことなのか薄々感じながらも、海外へ渡航し、からゆきさんになってからの生活を語っています。
著者とおサキさんが寝食を共にするうちに本当の身内のような心の交流が生まれて来るのですが、3週間の滞在を終えて、明日帰ること、自分がからゆきさんの研究をしていることを告白して謝罪する著者と、目的に薄々気づいていながら、さり気なく協力してくれていた、おサキさん。この辺りはかなりグッと来るんですね。
月4千円の息子の仕送りを頼りに電気も水道も無い家での極貧生活(当時の4千円って今の幾らぐらいなのかわかりませんが)普通だったら話したくもない過去のこと。どうして、どこの誰ともわからないアカの他人に優しくなれるのでしょうか。
騙されたりして連れて行かれた人、渡航中の劣悪な環境で亡くなった人もいたこと、多い時は一晩で30人ものお客を相手にしなければならなかった、帰国しても過去のことや貧しい生活から自殺してしまった人など胸が痛みました。
結局、著者は取材に協力してくれた人達に迷惑がかかるのではないかと躊躇したそうで4年後にこの本を出版しました。
あとがきに書いてあった取材後もおサキさんとの交流が続いた件は心が温まりました。 ドキュメンタリーなのでしょうが小説のようにも感じました。Filed under: 読書
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