frunブログ集
メイン | 簡易ヘッドライン |
【2015 第84回日本音楽コンクール ヴァイオリン部門本選会を聴く】 (2015-10-26 7:06:49)
結果を改めて
1位 小川恭子(桐朋学園大学4年)
2位 該当無し
3位 吉江美桜(桐朋学園大学1年)
3位 小林壱成(東京藝術大学3年)
入選 上野明子(桐朋学園大学4年)
第81回の会田さん、第82回の大江さん、第83回の吉田さんに続き、桐朋生が4年連続1位となり、弦の強さを改めて感じた。
私は今年は3次予選(イサン・ユン「大王」とブラームスのソナタ2番全曲)と本選を聴いた。コンクール結果には本選演奏に
3次予選得点の60%が加算される。
私は3次予選終了段階では、 この4人の中では素人感想だが、
1位:小川恭子
2位:上野明子
3位・小林壱成
4位:吉江美桜
という印象だった。特に3次では、最後に弾いた小川さんは2曲とも大変素晴らしく、本選に向けていいスタートになったと思った
(3次予選の順位、得点等は未公表)。
今回、第2位がいないということは、小川さんがあまりにも凄かったという意味もあったのかもしれない。ただ、2位を出さない
というのは近年、珍しく、審査員間で、2位を出すべきでは?という議論があったかもしれない。審議に少し時間がかかり、
ロビーに掲示される時間が例年より少し遅かった。
ロビーにて発表を待つ聴衆達も、「まだ発表されない」という緊張が次第に大きくなり、私もその雰囲気に呑まれた。
発表されるや、キャー!という声が響き渡るのは例年通り。
なお、私の素人予想では以下だった。
1位 小川恭子もしくは上野明子
3位 小林壱成、吉江美桜
上野さんの評価が低かったのが非常に残念。
では演奏順に素人感想を。
まず、オーケストラは東京交響楽団。指揮は高関健さん。Vnは対向配置。Cbはストバイの後ろという高関さんのこだわりを感じた。
高関さんの的確なサポートに、ソリストの4人は安心して弾けたと思う。私は3FLで鑑賞。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
最初に上野さん(チャイコフスキーの協奏曲を選択)。上野さんは「横浜国際」「クラコン」を始め、多くのコンクール受賞歴がある。
ソロ冒頭から、見事な歌を奏で、私は「つかみはOK!」と感じ、曲の終了まで弛緩がない、非常に芸術的な演奏だったように思えた。
聴衆だけでなく、ホールのデッキを始め、木々に音が染み渡っていくような演奏。
ただ、全体に音量が大きかったことが、もしかしたら減点対象になったのかもしれない(オペラシティ大ホールの隅々にまで大きく
鳴らせたというのは素晴らしい技量だと思う)。
演奏のミスは殆ど感じられなかった。第3楽章でオケと一部ズレた程度。第1楽章のカデンツァも、伸び伸びとした演奏だったし、
第2楽章の彼女の解釈は私としては近年、聴いた音大生の中では断トツの演奏だった。音量だけの問題で入選止まりとは、納得出来ない。
何か、素人の私にはわからないものがあったのだろう。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
2番目は小林さん。彼もチャイコフスキーを選んだ。彼の演奏は、上野さんとは大きく異なり、曲を確実にしっかり弾こうという姿勢を
感じた。3次予選の時よりも少し緊張している様子がわかった(当然と言えば当然だが)。
推進力ある演奏だったが、私にはもう1つ、何かが欲しいという演奏解釈の点で、上野さんより下になった。
(しかし上述したように彼は第3位)。
また第3楽章のオケ伴奏部分で地震が起きた。弱い揺れだったが、天井のライト群がぶつかってガシャガシャと音を出し
(自動アナウンスが流れるか?と思った)、一瞬、ホール内は騒然としたが、小林さんも高関さんも動じなかった。
ただ、オケメンバーの一部は少し動揺し、天井を眺める事態となった。何か落ちてきて、楽器に当たったら一大事だ。
また気のせいかと思うが、この地震後にオケの音色が強く変化したようにも思えた。地震でも動じず頑張っている小林さんへの
応援にも感じた。コンクールは何が起きるか、わからない。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
休憩後、吉江さん。彼女はブラームスを選択。近年。この本選では、バルトークもしくはブラームスを選択する人が多くなった。
ブラームスはご存じのようにオケが壮大になるところが多く、それと対等に弾かなければならないというパワーも必要。
ただ、どうしてもそれが力任せになってしまう危険性もある。
吉江さんの場合、第1楽章でそれを感じる箇所があった。また彼女の楽器の特徴なのか、よくわからないが音色がどうも安定せず、
時に非常に固い(きつい)部分を感じ、音程は良くても、少し聴きにくいという印象もあった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
最後は小川さん。昨年の入賞から再挑戦。昨年はブラームス、今年はメンデルスゾーンで挑んだ。内外のコンクールで既に実績が
ある彼女だが、音コンに再挑戦は並々ならぬ想いがあっただろう。また2年連続本選というのは、非常に難しい。
1年前に入賞するも、翌年は2次予選で敗退という方が過去に何人もいる。
またそういうことになると、自分自身の技量に不安を抱きかねない。しかし彼女はそういうプレッシャーにも打ち勝ち、
本選に進んできた。
さてそのメンデルスゾーンだが、冒頭のソロから、私には何か花畑で聴いているような(オッサンが花畑で聴くというのは怪しい表現
だが)印象を持った。とにかく、音色がエレガントというかチャーミングというか、まさにそのような演奏だった。
こんなにこの曲って可愛かった?と思うほどの演奏。彼女の高い音楽性を感じた。数箇所ミスがあったが、それがあっても
圧倒的な演奏だった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
上記4人を聴いて、小川さんか上野さんか、という私の評価だった。
小川さんのメンデルスゾーンで優勝というのは衝撃だ。超有名曲、音教に通う小学生でもとりあえず弾けるというこの曲をいかに
自分の心で咀嚼というか分析し、表現するというのは、非常に難しいと思うし、またこの曲はヴァイオリニスト泣かせというか
音程等で嫌なポイントがいくつかある(そういうところを知って、この曲は苦手という方が多い)。
小川さんの快挙は、私が今まで接してきた日本音楽コンクール.ヴァイオリン部門の中でも歴史的事件だったと思う。
私の右隣席には藝大生が2人着席。開演前の会話から小林さんの友人のようだった。しかし「客観的に聴こう!」という話を
していて、さすが藝大生と思った。
というのも、近年、東京音大の学生が本選に出場した時は、そこの在学生と思われる学生が大挙して押しかけ、演奏終えるや
ブラヴォー、そして立ち上がって拍手等、露骨な応援を見せられ、閉口した。真面目に鑑賞した同大の学生もいたと思うが、
私には不快極まりなかった。応援に来るのは良いことだが、今回の藝大生の会話にあるように、出来るだけマナーよく
落ち着いて鑑賞して欲しい。今回はフライング拍手等もなく、基本、いい審査会だった。
最後に、4人を聴きながら思ったのは、小さい時から楽しいこと、悲しいこと等、心が強く揺れ動く体験をさせることが
必要だということ。
感動!そして後日にそれを上回るもっと強い感動!等を親は経験させたり、本人が経験するということ。うまく記せないが、
心の幅を広くさせることは、本人の芸術の育成に必ずや繋がると思う。これは楽器の練習だけで身につかない。
山・海・夕陽等の自然の美しさ、人間愛(友情、恋愛)、達成感、喪失感(ペットの死等)、そして挫折感..、
様々な経験をすること。
日本音コン本選に出る方は今年に限らず、このようなことを沢山経験してきたと思う。ご両親の教育もお見事だったと思う。
一緒に美しいものを見たり、悲しいことに接してきたはず。
今回、本選に出た学生のあるお母様が近くで聴いていた。本人の演奏だけでなく、4人全員に力強く拍手をされていた。
本選に出る子の気持ちが人一倍わかるからだろう。
要項が発表されてからこの半年。長いようで短かった戦いだったと思う。
1位 小川恭子(桐朋学園大学4年)
2位 該当無し
3位 吉江美桜(桐朋学園大学1年)
3位 小林壱成(東京藝術大学3年)
入選 上野明子(桐朋学園大学4年)
第81回の会田さん、第82回の大江さん、第83回の吉田さんに続き、桐朋生が4年連続1位となり、弦の強さを改めて感じた。
私は今年は3次予選(イサン・ユン「大王」とブラームスのソナタ2番全曲)と本選を聴いた。コンクール結果には本選演奏に
3次予選得点の60%が加算される。
私は3次予選終了段階では、 この4人の中では素人感想だが、
1位:小川恭子
2位:上野明子
3位・小林壱成
4位:吉江美桜
という印象だった。特に3次では、最後に弾いた小川さんは2曲とも大変素晴らしく、本選に向けていいスタートになったと思った
(3次予選の順位、得点等は未公表)。
今回、第2位がいないということは、小川さんがあまりにも凄かったという意味もあったのかもしれない。ただ、2位を出さない
というのは近年、珍しく、審査員間で、2位を出すべきでは?という議論があったかもしれない。審議に少し時間がかかり、
ロビーに掲示される時間が例年より少し遅かった。
ロビーにて発表を待つ聴衆達も、「まだ発表されない」という緊張が次第に大きくなり、私もその雰囲気に呑まれた。
発表されるや、キャー!という声が響き渡るのは例年通り。
なお、私の素人予想では以下だった。
1位 小川恭子もしくは上野明子
3位 小林壱成、吉江美桜
上野さんの評価が低かったのが非常に残念。
では演奏順に素人感想を。
まず、オーケストラは東京交響楽団。指揮は高関健さん。Vnは対向配置。Cbはストバイの後ろという高関さんのこだわりを感じた。
高関さんの的確なサポートに、ソリストの4人は安心して弾けたと思う。私は3FLで鑑賞。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
最初に上野さん(チャイコフスキーの協奏曲を選択)。上野さんは「横浜国際」「クラコン」を始め、多くのコンクール受賞歴がある。
ソロ冒頭から、見事な歌を奏で、私は「つかみはOK!」と感じ、曲の終了まで弛緩がない、非常に芸術的な演奏だったように思えた。
聴衆だけでなく、ホールのデッキを始め、木々に音が染み渡っていくような演奏。
ただ、全体に音量が大きかったことが、もしかしたら減点対象になったのかもしれない(オペラシティ大ホールの隅々にまで大きく
鳴らせたというのは素晴らしい技量だと思う)。
演奏のミスは殆ど感じられなかった。第3楽章でオケと一部ズレた程度。第1楽章のカデンツァも、伸び伸びとした演奏だったし、
第2楽章の彼女の解釈は私としては近年、聴いた音大生の中では断トツの演奏だった。音量だけの問題で入選止まりとは、納得出来ない。
何か、素人の私にはわからないものがあったのだろう。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
2番目は小林さん。彼もチャイコフスキーを選んだ。彼の演奏は、上野さんとは大きく異なり、曲を確実にしっかり弾こうという姿勢を
感じた。3次予選の時よりも少し緊張している様子がわかった(当然と言えば当然だが)。
推進力ある演奏だったが、私にはもう1つ、何かが欲しいという演奏解釈の点で、上野さんより下になった。
(しかし上述したように彼は第3位)。
また第3楽章のオケ伴奏部分で地震が起きた。弱い揺れだったが、天井のライト群がぶつかってガシャガシャと音を出し
(自動アナウンスが流れるか?と思った)、一瞬、ホール内は騒然としたが、小林さんも高関さんも動じなかった。
ただ、オケメンバーの一部は少し動揺し、天井を眺める事態となった。何か落ちてきて、楽器に当たったら一大事だ。
また気のせいかと思うが、この地震後にオケの音色が強く変化したようにも思えた。地震でも動じず頑張っている小林さんへの
応援にも感じた。コンクールは何が起きるか、わからない。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
休憩後、吉江さん。彼女はブラームスを選択。近年。この本選では、バルトークもしくはブラームスを選択する人が多くなった。
ブラームスはご存じのようにオケが壮大になるところが多く、それと対等に弾かなければならないというパワーも必要。
ただ、どうしてもそれが力任せになってしまう危険性もある。
吉江さんの場合、第1楽章でそれを感じる箇所があった。また彼女の楽器の特徴なのか、よくわからないが音色がどうも安定せず、
時に非常に固い(きつい)部分を感じ、音程は良くても、少し聴きにくいという印象もあった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
最後は小川さん。昨年の入賞から再挑戦。昨年はブラームス、今年はメンデルスゾーンで挑んだ。内外のコンクールで既に実績が
ある彼女だが、音コンに再挑戦は並々ならぬ想いがあっただろう。また2年連続本選というのは、非常に難しい。
1年前に入賞するも、翌年は2次予選で敗退という方が過去に何人もいる。
またそういうことになると、自分自身の技量に不安を抱きかねない。しかし彼女はそういうプレッシャーにも打ち勝ち、
本選に進んできた。
さてそのメンデルスゾーンだが、冒頭のソロから、私には何か花畑で聴いているような(オッサンが花畑で聴くというのは怪しい表現
だが)印象を持った。とにかく、音色がエレガントというかチャーミングというか、まさにそのような演奏だった。
こんなにこの曲って可愛かった?と思うほどの演奏。彼女の高い音楽性を感じた。数箇所ミスがあったが、それがあっても
圧倒的な演奏だった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
上記4人を聴いて、小川さんか上野さんか、という私の評価だった。
小川さんのメンデルスゾーンで優勝というのは衝撃だ。超有名曲、音教に通う小学生でもとりあえず弾けるというこの曲をいかに
自分の心で咀嚼というか分析し、表現するというのは、非常に難しいと思うし、またこの曲はヴァイオリニスト泣かせというか
音程等で嫌なポイントがいくつかある(そういうところを知って、この曲は苦手という方が多い)。
小川さんの快挙は、私が今まで接してきた日本音楽コンクール.ヴァイオリン部門の中でも歴史的事件だったと思う。
私の右隣席には藝大生が2人着席。開演前の会話から小林さんの友人のようだった。しかし「客観的に聴こう!」という話を
していて、さすが藝大生と思った。
というのも、近年、東京音大の学生が本選に出場した時は、そこの在学生と思われる学生が大挙して押しかけ、演奏終えるや
ブラヴォー、そして立ち上がって拍手等、露骨な応援を見せられ、閉口した。真面目に鑑賞した同大の学生もいたと思うが、
私には不快極まりなかった。応援に来るのは良いことだが、今回の藝大生の会話にあるように、出来るだけマナーよく
落ち着いて鑑賞して欲しい。今回はフライング拍手等もなく、基本、いい審査会だった。
最後に、4人を聴きながら思ったのは、小さい時から楽しいこと、悲しいこと等、心が強く揺れ動く体験をさせることが
必要だということ。
感動!そして後日にそれを上回るもっと強い感動!等を親は経験させたり、本人が経験するということ。うまく記せないが、
心の幅を広くさせることは、本人の芸術の育成に必ずや繋がると思う。これは楽器の練習だけで身につかない。
山・海・夕陽等の自然の美しさ、人間愛(友情、恋愛)、達成感、喪失感(ペットの死等)、そして挫折感..、
様々な経験をすること。
日本音コン本選に出る方は今年に限らず、このようなことを沢山経験してきたと思う。ご両親の教育もお見事だったと思う。
一緒に美しいものを見たり、悲しいことに接してきたはず。
今回、本選に出た学生のあるお母様が近くで聴いていた。本人の演奏だけでなく、4人全員に力強く拍手をされていた。
本選に出る子の気持ちが人一倍わかるからだろう。
要項が発表されてからこの半年。長いようで短かった戦いだったと思う。
execution time : 0.030 sec