レース後の　輝く夜に　君がいる

　今年の北海道マラソンは、レースのあとにも大きなイベントが待ち構えていました。

　それは5月のことです。『加賀谷はつみの◎◎で歌ってみた』という企画が発表されました。加賀谷はつみさんによる出張ライブ企画です。どのような集まりでも、20人以上が集まり、その場で10月16日発売の1stアルバム【シンガーソングハイカー】の予約受付をできるなら出張ライブに出かけます、という企画です。ただし活動の中心は東京ですから、関東地方以外は交通費は負担しなければなりません（北海道の場合は宿泊費も）。だけど1月の夢チカライブ以降、はつみさんの生歌に飢えていた私は、早速企画を考え始めました。費用は道外遠征を1回我慢すればなんとかなりますから（笑）。

　ただ来て歌ってもらうだけじゃつまらないと思い、彼女自身にも楽しんでもらえるような集まりにしたいと思った私が狙いをつけたのは、北海道マラソンでした。

　はつみさんと北海道マラソンには深い縁があります。2011年2月に沖縄県をスタートして全国47都道府県を路上ライブしながら回り、1つの都道府県でCDを100枚売ったら次の都道府県に行けるという『はつみ前線』を敢行し、札幌でゴールをしたのはこの年の北海道マラソンの2日前でした。その間に作った【君がいる】でメジャーデビューをし、同時にこの曲は2011北海道マラソンのテーマソングに採用されました。

　私がはつみさんのことを知ったのはそれがきっかけです。この【君がいる】のインパクトの強さは強烈でした。走る上で、大きな力をもらえる曲でした。私以外にも、この曲に魅せられたランナーが大勢いることでも、この曲の力がわかると思います。

　そんなはつみさんですから、ぜひ北海道マラソンのときに来てもらいたいと思ったのです。

　最初は北海道マラソンのある関連イベントの主催者の方に、そのイベントの中ではつみさんのライブをできないかと話を持ちかけました。そうしたところ快諾を得られました。そこでその企画をはつみさんのマネージャーさんに伝えたところ、スケジュール的にも問題はないということで実現に向かって動き始めたのです。

　ところが7月になってから、その関連イベントが今年は中止されることになったという連絡が入りました。私は一気に絶望のどん底に落ちてしまいます。せっかく日程も押さえてもらったのですから、なんとか代替の企画を用意したいと思いました。でも何も思いつきません。数日後、マネージャーさんに事情説明とお詫びのメールを送リキャンセルさせてもらうことに
しました。

　捨てる神あれば拾う神あり。そんな諺を実感したのはそのメールを送った数時間後です。

　実はイベント中止の連絡が来たとき、このような企画をしていたけれども実現できなくなったということをとあるコミュニティでつぶやいていました。それに関するやり取りの中で、「せっかくスケジュールを押さえていてもらったならキャンセルするのはもったいない。少人数のライブをできる店も知っているし、そういうライブを開催したこともあるので、ライブをやりませんか？」と申し出てくれた方が現れたのです。私は再びマネージャーさんに連絡して、この話を進めることにしました。

　そのあとは、私はライブを開催するための実務についてはわからないため、その方とマネージャーさんにお任せしました。飛行機と宿の手配もまかせっきりで、私は費用負担と集客だけの担当です。ライブを行うワインハウス祥瑞札幌は、座席数22名のお店です。北海道マラソンに参加する知り合いのランナーや道内のはつみさんファン仲間に声をかけると、22の席はすべて埋まりました。そしてついに「加賀谷はつみ＆北海道マラソン完走プライベートミニライブ」の実現です。

　当日のレース後、ホテルに戻りシャワーを浴びた後、まずはLRS北海道主催の打ち上げです。こちらが終わった後、ライブに参加するメンバーを率いて祥瑞に向かいました。そしてまもなく、夢のような瞬間の始まりです。

　アンコール曲を含めて7曲。本当に最高の時間でした。本当は北海道マラソンも最高の走りをしてこの夜に臨むはずでしたが、それができなかったことだけは心残りでした。でも結果は伴わなかったものの、全力を尽くしたご褒美です。至福の時を味わいました。