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レース後の 輝く夜に 君がいる〜2013北海道マラソン完走記8 (2013-9-4 22:41:50)
(8)ゲリラ豪雨
ここまでも何度か雨粒が顔に当りました。でも、雨かと身構えるとそれっきりということが続いてきました。しかし今回は雨だけではなく雷も追いかけてきている状況です。しかも雨の粒もこれまでよりはるかに大きいです。いよいよここまでかと思いました。
いや、そんなことを考えたというのは今だからいえることでしょう。このときはそんな時間的な余裕はありませんでした。雨粒が当りだしたかと思うとそれは急激に広がり、さらに密度を増して降ってきました。
使い古された表現ですが、この雨を言い表すにはこの言葉しかありません。バケツをひっくり返したように雨が降ってきます。その粒の大きさと勢いは、体に当ると痛いくらいです。
「これ、雹に変わったら大変だな。隠れるところもないし、怪我をするぞ」
そんな的外れなことも考えていました。
このゲリラ豪雨はレースの状況を一変させます。メガネをかけて走っている私は、メガネに水滴がびっしりとついてしまい視界を失ってしまいます。コース上は川のように雨水が流れ、シューズも水浸しになります。ここまでシューズを濡らさないように慎重に走ってきたというのに、ここまでの努力がすべて水の泡となってしまいます。
だけど私たちランナーは自分が好きで走っているのですから、雨が降ろうと雪が降ろうとかまいません。新川通の沿道に大勢詰めかけてきている皆さんやボランティアの皆さんまでこのゲリラ豪雨に遭ってしまい、なんだか申し訳なく思ってしまいます。そんな中でも多くの人々は観戦を続けていました。また給水所のスタッフの皆さんは、ゲリラ豪雨のときに出されていた水はいったん全部捨てて、再度コップに水を入れなおしたとか。雨の中でもそんな作業をしていただき、本当に感謝です。
ゲリラ豪雨が降っていたのは実際は数分間だったのでしょうか。でも私にはとてつもなく長く思えていました。
30kmの通過タイムは2時間56分35秒でした。この間の5kmは29分24秒ですから、5kmラップだけを見るとこの前の5kmと大きく違っているわけではありません。ですが1kmのラップは6分20秒とついに6分を超えてしまいました。
「誰だよ、多少雨が降っても影響ない、なんて言ってた奴は」
もちろん私です。想定していたのは適度なお湿りとなる雨でした。こんな雨までは想定していませんでした。雨がほとんど上がったのでメガネの水滴をウェアでぬぐいます。きれいに見えるようになったわけではありませんが、どうにか視界を確保しました。ですが腰と膝とふくらはぎの痛みに加えてゲリラ豪雨で、私の足はますます重くなりました。
いったんコース脇に外れて腰の屈伸をします。そして膝の屈伸もします。膝も腰もかなりつらい状態になってきています。ふくらはぎが今にも攣りそうなことにも変わりありません。しかも濡れたシューズでちょっと走っただけなのに、左足の裏、母指球のあたりに熱さを感じ、マメができそうな状態であることがわかります。
走っては休みという状態になってきたせいでしょう、ラップタイムはさらに悪くなります。31kmのラップは7分11秒まで落ちました。29kmまではどうにか5分台のラップを保ってきましたが、どうやらそこまでで足を使いきってしまったようです。足がまったく上がらなくなってしまいました。
徐々にペースが落ちていくことはこれまでもいやというほど経験しています。でもこれほど急激にペースが落ちてしまうことは想定外でした。29kmまでで足を使いきった上に、雨で戦意まで洗い流されてしまったのかもしれません。
しかしそんなことを言ってられません。もはやタイム的な目標を追うことはできそうにありませんが、最低限完走だけはしなければなりません。まだ残り10km以上あります。ここで戦意を失ったなどと言ってると、ゴールまでたどり着くことすら難しくなります。そんなことは許されません。足が痛もうと腰が痛もうと、ひたすらゴールを目指します。
32kmのラップは7分22秒です。ここまで3時間11分08秒です。各関門の制限時間はチェックせずに走っていますから、この先どのくらいのペースならば大丈夫なのかわかりません。でもそれはかえって助かりました。関門制限時間がわかれば、それに間に合うように走ればいいと計算をしてしまうかもしれません。でも今は制限時間がわからないから、計算せずに必死で走るしかありません。ともかく全力で先を目指します。
ようやく新川通を終えて西野屯田通に入ります。しかしここで右のシューズの中に異物が入っていることに気がつきました。気づいてしまうと気になってたまりません。1分1秒を争う状態でもないので、歩道に上がって右のシューズを脱ごうとします。ふくらはぎが悲鳴を上げそうになって慌てました。ふくらはぎに注意をしながらシューズを脱いだのですが、今度は右の足底筋が軽く攣ってしまいました。かなり足にはきているようです。
苦労をしながらシューズを脱ぎ異物を出しました。直径2ミリくらいの小石です。この石のおかげで堂々と得られた休息から、またコースに戻っての苦しみが始まります。
はっきりとペースダウンをしていますから、周りのランナーからは抜かれ放題の状態です。私は一番左端を走り、ゲリラ豪雨にも負けずに沿道で応援してくれる皆さんに、無理して笑顔を作って応えながら走り続けます。
33kmのラップは8分09秒まで落ちました。小石との格闘でロスタイムがありましたからこの8分台は仕方ないでしょう。残り9kmあまりです。なんとか頑張りましょう。(つづく)
(1)チャレンジ
(2)対決前夜
(3)青い空と黒い雲
(4)隙間がない
(5)許容範囲
(6)併走
(7)5分台を維持