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またしても ゴールが遠い サロマみち〜第28回サロマ湖100kmウルトラマラソン未完走記7 (2013-7-15 0:29:06)
(7)体の借金
ペースを落としても、右膝への負担が少なくなるフォームを模索しても、痛みは一向に楽になりません。仕方がない、非常事態です。コース脇に立ち止まり、ウエストポーチからスプレーを取り出して右膝にかけます。フェルビナク配合のおかげで、一瞬痛みはひいてくれて、走れるようになります。でもそれはあくまでも一瞬のこと。まもなくまた強い痛みが襲いかかってきます。
この時ほどエイドステーションを嬉しく思ったことはありません。しかもどんどん気温が上昇しているため、エイドのスイカがとても美味しく感じられます。昨年の序盤は胃の調子が悪かったためスイカも食べられませんでした。でも今年はしっかり食べられます。膝の痛みさえなんとかなれば、体の調子は昨年よりもずっといいようです。
35kmを過ぎてからはときどき上り坂も現れます。ここはホッと一息をつきながら歩きます。ただ膝の痛みのためいつものようなペースでは歩けません。それがちょっと気がかりです。
痛みに耐えきれなくなると立ち止まってスプレーを使いまた走る。それを何度か繰り返しましたが、なかなかリズムが戻りません。ついに上りじゃなくても歩いてしまいます。
歩くとまた痛みが少し楽になります。そうするとまた走りだします。でもまた痛みに耐えられなくなると歩く・・・ということの繰り返しになってきました。
40kmの通過タイムは4時間42分44秒です。この間の5kmは41分37秒とかなりかかってしまいました。でもまだ昨年とほとんど変わらないタイムです。まだ膝さえ回復すれば十分に完走できるはずです。とにかく前に進みます。
でも心の余裕はなくなってきました。沿道の声援にもなかなか応えられないときもあります。痛みに苦しみしかめっ面をしているときもあります。すっかり自分を見失いながら走っていました。
でもひとつだけ失わないようにしていたことがあります。それは自分からレースを投げ出すようなことはけっしてしないこと。後から後悔をするような心が折れるレースはしないこと。それだけは自分に言い聞かせながら走っていました。
月見が浜に入ると応援の人の数が増えます。知り合いの応援を受けると一瞬痛みを忘れて笑顔になれます。でもその笑顔には力が入っていないことが自分にもわかります。
次々と抜かれていきます。抜いていく人もけっしてスピード感があるわけではありません。でも誰ひとりとして諦めている様子の人はいません。今までの私はこのあたりで早々と諦めていたかもしれません。でも今の私は諦めるということを忘れています。とにかく前を目指して走り続けます。
月見が浜を抜けて再び国道に出ます。相変わらず膝の痛みは消えません。というより、ますますひどくなってきます。走ったり歩いたりしながら前を目指しますが、なかなか展望が開けてきません。
45kmの通過タイムは5時間27分50秒。この間の5kmは45分06秒です。ついにキロ9分を超えました。もはやワッカペースです。
冷静な部分の私は、これだけペースが落ちたら完走は厳しいのではないかと私に囁きます。でもその声に耳を貸してしまっては、リタイア続きだった頃の自分に戻ってしまいます。必ず膝の痛みが消えて・・・消えなくともその痛みに慣れて走れるようなときがやってくるはず。その復活を信じてひたすら前を目指します。
でもそんなに簡単に復活は訪れません。痛みはますます強くなってきた上に、スプレーも使い切ってしまいました。
50kmの通過タイムは6時間13分39秒。この間の5kmは45分49秒です。どうにかキロ9分そこそこのペースを維持するのが精一杯です。
50km関門は閉鎖まで16分あまりを残して通過しました。でも60km関門の閉鎖時間まで1時間21分21秒しかありません。ここでペースを上げなければ間に合いません。
だけど頑固な膝の痛みが消えるだろうか・・・。それに加えて腰の痛みも強くなってきました。この状態でペースを上げるのは至難の業です。ここで無理をして膝や腰を痛めてしまうと今後のレースに影響が出るかもしれません。それならいっそのこと50km関門でリタイアすべきだったかも・・・。そんな思いも出てきます。
腰痛は覚悟をしていましたが、この膝痛はノーマークでした。どうしてこんなことになったのでしょう。序盤、昨年よりも貯金を作って走っていたことが原因でしょうか。金哲彦さんの言うように、タイムの貯金が体の借金となってしまったのかもしれません。
この先、52kmくらいにはエイドもあります。そこでリタイアを申し出る手もあるかもしれません。そんな考えも頭に浮かびました。(つづく)
(1)8回目の挑戦
(2)感謝の気持ち
(3)長い旅の始まり
(4)これ以上ないすべり出し
(5)タイムの貯金は・・・
(6)初めてのピンチ