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6.大会報告室 : 第34回別海パイロットマラソン完走記書いてね。

投稿者 トピック
ゲスト
Re: 第34回別海パイロットマラソン完走記書いてね。『長文注意!』
”とりあえず12km”これが今回のレースマントラ
村上春樹のような格好のいいマントラではないですけれど。

レース前にあるお友達とお話しをしました。
『今度、別海町でフルマラソン走るんです。
完走すると鮭、大判のバスタオルやバターがもらえたり、
コースの途中の牧草ロールにメッセージが書いてあったりね、
沿道の人達はランナー名簿入りの旗持っていて、名前を呼んで応援してくれるんですよ…
昨年は、3時間41分でゴール!初めてサブ4達成して、すごく嬉しかったんです。
で、今回の目標は3時間40分は切りたいと思っていて…
僕の練習コースは12kmでね、最近は1kmを5分を切るペースで走っているんです。
このペースで行けば、サブ3.5、3時間30分を切ることが出来るんですよね…
でも、12kmを1時間以内で走ることは出来ても、そのペースを3時間30分も続けるのは、僕には無理だと思うんです…』
そのお友達はフルマラソンの経験のない人。
でもあっさりと僕にこう言ったんですよ。
『じゃあ、最初の12kmをキロ5分切って走れば?
それが出来たら、今までのことは無し!リセットして次の12kmをまた同じペースで走る…それを3回繰り返したら?残りの6kmは全力で走れば?』って。
その時は、『フルマラソンてさぁ〜そんな簡単なものじゃないんだよ〜』って一笑に付したんです。
でも、何となく…行けるところまで行ってみよう!やれるところまでやってみよう!という気持ちが少し芽生えた様な気がしました。

レースの前夜、
根室に住む兄の家で兄特製の“ちゃんちゃん焼き”を食べ、ビールを飲みながら明日のレースのことを話していました。
『明日は、3時間30分のペースで走る。途中でダメになるかも知れないけれど、行けるところまで行くよ』
思えば、今まで6回のフルマラソンを走ったんですが、自分の持つ力を限界まで出していないんじゃないかと日頃から思っていました。
じゃあ挑戦してみよう!と気持ちに整理を付けました。
まんまと、お友達の暗示…魔法にかかってしまったみたい。その気になってしまいました。
無邪気な言葉は恐ろしいです。
第二のマントラは”行けるところまで行く”かな。

レース当日は6時に起き、パン2切れ、バナナ2本を食べ、兄が入れてくれたコーヒーを飲んで、気持ちを落ち着かせながらレース着に着替えました。
数日前に別のお友達から誕生日プレゼントにと戴いたベルトポーチにジェル3個押し込んで腰に装着。今回の作戦は25km、30km、35kmでジェル注入!です。いつもは2個(25、35km)なんですけれど、8月の北海道マラソンのラップを見ると30〜35kmのラップが落ちていることもあり、30kmでの注入を試みることにしました。

兄の車で別海町に向かい、1時間くらいで到着。別海町は秋晴れのよい天気でした。朝のひんやりとした空気が、緊張して少し高揚している心と体をクールダウンしてくれるようです。
会場は、ランナーでごったかえすこともなく、ゆったりとした雰囲気が漂っています。田舎町のマラソン大会の雰囲気をかもし出していました。
体育館で受付を済ませ、もらったゼッケンを半袖のランシャツに取り付けます。実は、この瞬間は嫌いじゃないし、一番ナーバスになる時でもあるんです。ナーバスになりすぎて、安全ピンを指に刺してしまったり…。妙に気になるゼッケンの傾き。シャツの表裏、4ヶ所にていねいに安全ピンでゼッケンを貼り付けていきます。この作業は、走るというモチベーションを再確認するものなのかも知れません。そして、このある種の儀式のような行為を何かに例えるとしたら…そんな問いがあったとしても、うまく応えることが出来ないほど神聖なものかも知れません。

体育館の外に出て軽くストレッチ、1周400mのサブグランドでは多くのランナーがアップしていて、軽いペースで3周走りました。
その後、frunのくろいぬさん、こうめさん、レイさんにお会いしました。少しお話しをしましたが、解決しなくてはいけないちょっとした問題があり、早々にその場を立ち去りました。このちょっとした問題には本当に気を遣います。昨年の北海道マラソンでは、暑さのためにスタート前水分補給をこまめにしました。すぐに汗になってしまうだろうという考え…甘かったです。スタート前の整列時から問題発生でした。そのままスタートしましたが、5km付近で我慢しきれず沿道のコンビニでトイレを借りました。同じような人が数人並んでいて、また走り出すまで数分はかかったと思います。初のサブ4を目標とした大会でしたが、4時間3分でゴール。なんとも悔やまれる大会となりました。この経験から、レース前には出来るだけ何回も必要以上にトイレに行くようにしています。

スタート地点には気の早いランナーが既に並んでいました。中間よりもやや前の位置に並んだのは9:40頃、スタートの20分前です。気持ちがはやることもなく、ストレッチをしながらその時を待ちます。待っている間、心の中でマントラを唱えます。“行けるところまで行こう!”
10時に号砲がなり、ランナーが一斉に飛び出して行きます。先頭がトラックの反対側にさしかかる頃、やっと列が動き出します。スタートロスが少ないのがこの大会のいいところです。ロスタイムは10秒くらいでしょうか。和太鼓のドンドコドンドコという音を聞きながらそれぞれの勢いで競技場を後にします。
市街地に向かって走りながらガーミンの1kmのラップを見ると4’59”でした。『おおっ!ギリギリ5分切ってる〜スタートロスあまりないじゃないか!』このまま5分切って行こうと意を強くしました。次のラップは4’55”『いいねぇ!』、お次は4’51”『ちょうどいい!』、このままの感じで行こうと、さらに気持ちを高めました。
気にしていた左脚の膝内側も、右足首も痛くなることもなく、淡々と5分を切るペースでラップを刻んでいき5kmの通過タイムは24’10”でした。5km以降のラップは4’40”台でしたが、大丈夫!まだまだこれからだけど、このくらいのペースで走っちゃえ!
市街地を抜けコースの左右には牧草地が開けてきます。牧草地にはのんびりと黙々と牛が草をはんでいます。そんなゆったりとした大自然のなかを、せかせかと汗をかきながらひたすら走ります。右手にあった牧草ロールのメッセージ、“この道の先には栄光と鮭が待っている”。そか、でも栄光は要らないな…なんて思いながら、栄光じゃなくて酒だよ酒!いやビールだよ!とか、頭の中で考えるくらい変な余裕がありました。
別海のコースは、折り返し点までは比較的ゆるやかな登りで、淡々とイーブンペースでラップを刻んでいきます。ガーミンの1kmラップが頼りです。調子に乗ってオーバーペースにならないように、スローダウンしてしまわないように…。
10kmのラップは23’53”です。まあ、いいペースです。すこし身体に負荷のかかった、それでいて受容出来るペース。そんなペースで1回目の12kmを迎えました。
“とりあえず12km”はキロ5分を切れたけれど、これはいつも練習で出来ていたことです。問題は…“次の12km”です。今までの12kmは無かったことにして、また“次の12km”を走ることにしました。
12km過ぎくらいから、今まで集団で走っていたグループが縦長にばらけてきた様な気がしました。そんな中で、ある女性ランナーが同じペースで走っているのに気が付きました。4’50”くらいで抑えながら走っている感じです。その女性ランナーと並走している時間が長くなりました。ふ〜ん、ペースメーカーにするってこんな感じなのかな?と思いながら、前になったり後ろになったり横に並んだり…。中間点まではそんな感じで走っていました。
20kmのラップは、23’34”(キロ4’43”)です。想定していたタイムより若干速く走っているのは、ペースメーカーにしていた女性ランナーのおかげかも知れません。ただ、しつこく並走しているのが嫌になったのでしょうか…中間点過ぎくらいから彼女はギアを一段上げた感じに思いました。もはや、僕のペースでは追走出来ないほど、あっという間に離されてしまいました。女性ランナーをストーキングすることをあきらめました。これからは一人旅です。周りにも並走するようなランナーも少なくなりました。
どんどん離れていく女性の後ろ姿を遠くに見ながら2回目の12kmを迎えました。24km地点です。2回目の12kmもキロ5分を切って走ることが出来ました。2回目の“とりあえず12km”クリアです。
スタート前は、ひょっとしたらココまではやれるんじゃないかなとは思っていました。いざ、それが実現すると…やった!とは思うものの、ここで満足してはいけないと自分を戒め、気持ちをリセットします。
次の“とりあえず12km”のスタートです。
実は、この頃から左脚のハムストリングスが痛み始めました。この痛みが致命的にならないようにだましだまし走っていくしかないと思い、若干ペースを落とすことにしました。
ここまで来たら、もう“行けるところまで行く!”しかないですし、3時間30分を切る絶好のこのチャンスを逃したくないと強く思いました。もう…“やるしかない!”です。
今までの24回の5分切りと違い、これからの12回は、1回毎にクリア出来るのかという緊迫感のあるものとなりました。レースマントラの“とりあえず12km”は…3回目からは“とにかく今の1km”に変わりました。今の1kmを次の1kmをどうやって5分をオーバーせずに走り切るか!?それが目標です。それまで4’50”を切っていたタイムは徐々に落ち4’50”台になっていました。でも、5分切っているし…これでいいや!と。
1km毎にラップを見て、『よしっ!5分切ったな』と…何とか36kmまではギリギリでいいからキロ5分を切るペースで走ろうと。
今までのレースでは30〜35kmのラップがガッツリ落ちていましたが、今回はここを頑張らないと!自分の心に気合いを入れながら、一歩一歩ひたすら足を前に出していきました。31kmからは4’52”、4’58”、4’54”、4’56”、4’56”と綱渡り的に5分を切って走っていました。そうして、最後の36kmのラップは…4’59”でした。意地で5分を切った感じです。3回目の“とりあえず12km”もやっとの思いでクリアしました。これで、約束を果たしたと…マントラを授けてくれたお友達の顔を思い浮かべました。
『残りの6kmは自由に走るよ!』
それまでの気持ちの張りが解き放たれたかのように、37kmのラップは5’06”と遂に5分のボーダーを越えてしまいました。もう、ここまでやってきたからという気持ちになってしまったかも知れません。頭の中では、36km地点でスタートから2時間53分…3時間30分まであと37分もある。残りの6kmをキロ6分で走っても3時間30分は切れるじゃないかと、計算しています。
でも、ここで大崩れしたくはなかったですし、後ろにいるランナーに抜かされるのもイヤだと漠然と思い、重くなった脚に水をかけ気合いを入れ直しました。ペースは確かに落ちましたが、まだ5分をちょっと越えた範囲で走っていいました。大丈夫!まだまだ元気!

市街地に戻ってきてから、ゴールの競技場まではとても長く感じました。あと○kmというボードに少しガッカリしながら…。でも、この距離はこのくらいの距離なんだと、頭の中で想像しました。
いつもの練習コースの光景を思い出します。あと5km…『トリムコース1周だ!』、あと4km…『練習コース2周より短いじゃん!』、あと3km…『まだ、3kmもあるのかよ!?』、あと2km…『練習コース1周!』、あと1km…『あはは…』。
残りの1kmは、胸を張って恥ずかしくないように、心の中ではもう少しでビール飲めるぜ!と思いながら走りました。沿道の町民の方々から力強く声援がかかります。○○さんあと少し頑張れっ!一人一人に『ありがとうござ〜す』と応えながらゴールを目指して走り続けます。少年の右手が道路に差し出されます…パチンといい音がしてハイタッチ!後ろから頑張れ〜と声がかかります。気持ちを奮い立たせ…あともう少し。町民体育館が見え、右に曲がり、ゲートをくぐり、一周400mのトラックを最後の力をふりしぼって走ります。第4コーナを回り、最後の直線はグリコポーズ!こうめさんの様に両手を挙げながらゴールに走り込みました。

タイムは、3時間26分10秒!7回目のフルマラソンで、思ってもいなかった3時間30分切り…力を出し切ったベストタイム・
チャレンジすることで得られた結果です。
苦しかったけれど、ゴールしたら全て喜びに変わる。これが、マラソンの醍醐味なんでしょう。どんなタイムであれ走りきった結果、得られる充実感なんですね。

ゴール後は、地元のカワイコちゃんから大判のバスタオルを掛けてもらいます。
スポーツドリンクもらい、記録賞をもらい、バターをもらい…しょっぱい秋味鍋を食べ、ゆっくりと呼吸を整えていきます。秋味鍋を食べ終わり、いよいよ待望の鮭をもらいました。“この道の先には、鮭と酒が待っている!”まずは、鮭をゲットしてご満悦です。
今年も素晴らしい大会をサポートしてくれた別海町のみなさんにも感謝です。
鮭を抱え体育館の方に歩いていくと、兄が『お疲れ』と声をかけてきました。兄は、レース中コースのところどころで待ちかまえ、声をかけて励ましてくれました。
“レストランはまなす”…別海町のB級グルメ、ジャンボホタテバーガーを食べさせてくれるお店です。レースが終わって1時間後、BMG(別海ミルクガール)のロゴのジョッキに入ったビール!を飲みながら、いつもよりも饒舌に話す僕と兄の二人がいました。

一週間後の今日、レース後初めて1周2.2kmの練習コースを3周走ってみました。身体に負担がかからないようにゆっくりとしたペースで。脚のどこかが痛くはないだろうかと確認しながら…。左脚の膝内側はまだ痛い。右脚のふくらはぎが痛い…。でも、また少しずつ走り始めよう!
約4万回同じ動作を繰り返した両脚に『お疲れさん』と心のなかで話しかけました。『今回のレースは終わったよ。リセットして新しい42.195kmをまた一緒に走ろうぜ!』。

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