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むぎ |
投稿日時: 2007-5-28 17:38 |
- 登録日: 2007-3-29
- 居住地: 東京、時折秋田
- 投稿: 396
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- 『走るほど 頭を垂れる ウルトラマン』むぎ完
- 川沿いの旧道らしい道をじわじわ上る。車の行き来も少なくなって、標高が上がったせいか再び霧雨も。道だけが上り、渓谷との標高差が開いた所で前方の視界が平に開けた、豊沢ダムだ。ダムの幅は意外と狭く小さなダムの様に見える。ダムの上を渡る道から恐る恐る渓谷を覗き込む。狭い幅に似合わずかなりな落差、冷たい霧雨も手伝ってかブルッと身が震える。左右からせり出す木々の濃い新緑に混じって八重桜のピンクが綺麗だ。
ダムを渡って直ぐトンネル、照明も無く奥は暗く怖い。道路の半分がコーンで仕切られ走路が確保されているものの、道幅は狭く歩み?走り?も急いてしまう。トンネルを抜けると、ちらちらダム湖が見える気分の良い林間道、細かい上下は有るがダム湖に沿っているので意外と平坦だ。
車の往来は少ないのだが、50k手前ほどから同じ車が何度も追い越して行く。車もトイレに入って何度も前後が入れ替わっているのか?などと馬鹿な事しか考えなかったが、私の周囲に居る誰かの応援で伴走しているのだろう。私を抜いたり私に抜かれたりするのだから走者は私の後ろに居るに違いない。ナンバーまで覚えてしまったこの黒塗りの高級車も仲間だ。
想像以上に奥深いダム湖と分かれて再び上り道、広い道路と合流し暫く進んだトンネルも本格的な2車線で路面も新しいものに。コーン敷居で走路が確保されている直ぐ脇を、結構なスピード・結構な頻度で車が通り過ぎる。奥に入って行くと次第に照明も少なくなり、繰り返し後ろから車のライトで照らされる前走者の姿が道しるべとなる。車と一緒に前走者の影がトンネルの壁を勢い良く駆け巡っては消えてゆく。
冷たい風が正面から強く吹き、暗さと不安から来る恐怖で凍える。車の騒音が過ぎ去ると暗闇に走者のシューズが擦れる音だけが響く、一瞬何処をどう走っているのかが解からなくなる。前方の暗闇から向かってくる寒風、眩しく過ぎ去るヘッドライト、一瞬周りの壁を駆け巡る人の影、進んでも進んでもなかなか出口が見えずここで一気に消耗した。
ようやく一筋の光がカマボコ型に大きくなって出口となり一心地着く、出口直ぐに久し振りのエイドが有り57.5k地点だった。この長かったトンネルが1.7kとの事だが、自分にはその数倍に思えた長さであった。持参した地図によれば、最高地点・標高530mはここらしい。道理で足が重かった訳だ、歩くはずの上りを暗闇の中で走ってしまったのだから。さてここからは200m下って再び100m上って、あとはだらだら下り基調のアップダウンでゴールまでだ。と、暖かいお茶をすすりながら自分に言い聞かせる。
下り道を下り、膝から力が抜けるような違和感を感じつつ旧道に分かれる。どうもおかしい、下りが唯一の息抜き・稼ぎ時なのに走れなくなってしまった。着地しても踏ん張れずそのまま座り込んじゃう感じ。仕方なく歩きで様子を診、時折止まって、ゆ〜っくり屈伸する。それを繰り返していたら、徐々に抜けた感覚が抜けていく(笑)。恐る恐る小走りし進む、「ウルトラは数回復活する」を信じて。
川沿いの旧道はくねくね道、せせらぎが直ぐ近くウグイスなども鳴いて応援してくれる。ふと我に返ると前に誰も居ない、振り帰っても誰も居ない。ありゃ?道に迷った?屈伸復活以降の記憶を辿るが分岐が有ったかどうか、思い出せない。車も全然通ってくれず不安は募る。この頃物忘れもひどくなって、人の顔と名前が一致しない事も・・。いよいよ来るべきものが速めに来たか、などと思いながらカーブを切るたびに前方に人影を探す。
すると人影は見えないものの看板発見!「60km地点」。\(^o^)/ 道、間違っていませんでした。ボケではなく、苦しい時の自衛本能での記憶飛びと解釈する事で納得させる。脳への栄養が足らなくなったのかも?と、次ぎのエイドでバナナ・チョコ・ジャムパンなどを大目に補給、心持ちスッキリした気分になる。
中山峠越えを終え50kコースと合流、元気な50k選手に引っ張られながら66.5kのレストステーションに向かう。唯一の着替え預けステーション、きっと食べ物も豊富だろうと期待が膨らむ。12:00ちょっと前に到着、荷物を受け取る。他のウルトラでの大きなレストステーションを思い浮かべていたが、そこは村の公民館、村のおばちゃん達の元気で暖かい接待と食料が待っていた。例の黒塗りの高級車も。
ウェアは寒いのでスタート時のまま、御腹を暖かい豚汁中心で満たし、昔ながらのおつりの返りそうなトイレを使い、寒さ対策のビニールを貰い出発。いきなり雨模様、早速貰ったビニールを被る。傍らを「寒いっ! 寒いっ!」と呟きながら、ランパン+ランシャツ+ビニールの女性が走り去る。予報だけを信じてのいでたちだったのだろうか、露出している肌が寒さで赤まっていかにも寒そう。
普通の道を飽きながら進み70k、ラスト30kとなる。何時もこの距離からは「あと青梅30k」と思いながら進む。左折してなだらかな上りに、僅かに折り返すコース部分。自分を追い越して行った人、序盤で併走していた方、すれ違いでお互いに見つけ合うと道路の両側で会釈などでエールを交わす。距離調整での折返しかなぁと思いつつ、歩きたいのに歩きづらい折り返しを恨みながら進むと、そこには「銀河高原ビール」の本社工場が。観光コースだったのです。折り返して直ぐのエイドで「高原ビールは?」と聞いてみると、冗談だと思われるだけで一向に出て来る気配は有りませんでした。FRUN的には残念!真面目な大会だったのでした。
一度「ビール」などと口に出してしまった報いからか、頭の中は泡で充満!農地的にもまさに麦秋真っ盛りで、泡が頭からこぼれんばかり。手は勝手にウェストポーチに入れて有るお札を確認、目は雨上がりの青空・新緑に反応せず自販機探索モードに。しか〜っし、元来た広めの県道には戻らず手前の小道に左折「この道、ま〜っすぐですから」と誘導される。見れば銀河高原の名に恥じない高原の小道、周囲には収穫前の麦畑が、自販機など有ろうはずが無い!自然一杯の小道。「鶯宿温泉まで12k」の小さな木の表示が期待を打ち破ってくれる。思わず視線が落ちる。
『走るほど 頭を垂れる ウルトラマン』
鶯宿ダムまでの10kほど、泡を夢見て思考能力を失ったのが良かったのか、牛の落し物を避ける事への注意が良かったのか、歩きを交えながらも5キロ40分を維持出来た。鶯宿ダムを超えれば温泉は間近、再び県道とも合流して残り10kとなる。だんだんゴールまでの残り距離が普段の練習距離に近づいて気分だけは楽になる。興味が泡から残り距離へと変わって来た所で鶯宿ダムの湖に、間も無くダム地点を通過。前方に目指す雫石方面がちらっと見える。
鶯宿温泉で県道に合流、大型温泉施設「けんじワールド」の前でエイド、ここも充実していた。秋田では一般的な「婆ヘラアイス」にお汁粉、温・冷両極端だが両方戴く。お汁粉には食べ易く小さい餅が2個入って程よい甘さ、アイスもあっさり味で喉が渇かないので安心である。ここでも岩手放送の取材はされていたが、ここでも取材の選に漏れゆっくり味わえたのでした。 (ここでは「婆」がヘラでコーンにアイスを盛り付けるのではなく、おばちゃんでしたが。)
さてさて10kを切ってのカウントダウン、県道でしかも温泉街が近いので車が多くちょっと不安な道。先ほどの取材車両が3人先の方に大きなマイクをかざして取材走行している。取材されているせいかペースが上がってそこそこ走られている。自分にも来ないかと淡い期待をしながら頑張って走る、と取材車両が自分の手前100mほど先で歩道に寄せた。をっ?期待して背筋を伸ばしながら近づく。ドアから人が3人降り立ち後ろドアを開ける、いよいよか! それまで手に持っていた取材道具を仕舞い始めたのでした。あぁぁ〜、終わっちゃったのかぁ。
悔しいのでこちらから声を掛ける。「放送何時ですか?」 「6月3日、日曜だよ」「そうですかぁ、期待しています」
左に看板が「ゴール最後の難所、上り500m! 頑張れ!」 見ると岡に向かって上りが続いている。ここは精神的ショックと足腰の痛みで歩く事に。何時もの様に大きく手を振ってストレッチを兼ね、大股でぐいぐい気分で歩く。県道から分かれて田んぼ道へ、岩手山が綺麗に中腹まで見える。山頂までは見えないが雪も筋となって少しだけ残っている。最後のエイドでここまでの余韻を味わいながら残りの4キロへ向かう。
田沢湖線の線路を越えて住宅街に、時折声援も戴き足を騙しながら走ったり歩いたり。何時もの様に帽子を外して髪を手櫛で整えゴールの身支度を済ます(笑)。住宅街を抜けて競技場が目の前に、走者を迎える放送が急に大きく聞こえて誘導員に導かれ、競技場と体育館の間に進んだらゴールが目の前に。100kは右のゴールラインだとの事でそちらに、何時もの様に万歳しながら ゴール!!\(^o^)/ 感動のテープを切ったのでした。 12:25:57
メダルを掛けて貰って、会場の案内プリントと食券を戴いていたら係員から 「これからゴールを祝しての万歳三唱を行います!」と 係りの方々数名が【祝・完走!!】と言った様な幟を掲げ、大きな声で自分の名前を呼んでくれて 「**さんの100k完走を祝して万歳をします!」 「では! 万歳!万歳!万歳!」\(^o^)/ \(^o^)/ \(^o^)/
私も大きな声で万歳を叫んだのでした。気持ち良かった〜 ケイタローさんの万歳を思い出した瞬間でした(笑)。
荷物を受け取り着替え部屋に、すぐ隣りがシャワー室で行ってみたら6室も。すぐ開いて温水シャワーでさ〜っぱり。荷物を整理して食券を見たら、ホタテ焼き・焼きそばorおにぎり・豚汁・生ビールの4枚。周囲を見れば美味しそうに食べてる方が大勢、我も食べねばと思いつつ時計を見ればすでに17:00過ぎ。雫石駅から秋田方面の新幹線は17:42と余裕無し。急いでタクシーを手配し雫石駅まで行き、痛みで顔をしかめながらも満足感に浸りながら、新幹線で秋田・大曲まで行ったのでした。
『筋肉痛 痛がるほどに 達成感』 ---------------- むぎ
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