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むぎ |
投稿日時: 2008-10-17 9:04 |
- 登録日: 2007-3-29
- 居住地: 東京、時折秋田
- 投稿: 396
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- むぎのハセツネ
- りっきさんこんにちは、報告台設置感謝です。
では長文ですが完踏記です。
秋晴れの中、満員電車状態の隊列のまま13時00分に号砲は鳴った。 試走は夏に序盤の4分の1を、1週前に後半34kを行い、その筋肉痛が和らいだ所で今日を迎えた。特に後半は片側が切り立って狭かったり、急な岩場が有ったりと難所区間。昼でも嫌なコースで、終盤の大岳を下り終えるまでは気が抜けない。闇夜の中を怪我せずに乗り切れるか、不安と期待と後悔の念で一杯のスタートを切った。
『この気持ち 期待と不安 青春か?』
一般道からトレイル、大きな変電所の脇を通って今熊神社から山に入る。アドバイス通りに遠慮無く前方に並んだのでここまで大きな渋滞は無く進む。いよいよハセツネ突入、流れに身を任せ渋滞ポイント・入山峠に、その後時折発生する登り渋滞で息を整える。陽の有る内に何処まで進めるのか、周囲も同じ思いなのだろうか言葉少なく淡々と歩を進めている。
秋のつるべ落としとは良く言ったもの、陽が傾いたとたん林に囲まれたコースは暗がりに包まれた。 丁度下りにも入ったので安全第一とヘッドライトとハンディーライトを取り出す。周囲も同様にコースを避けザックを下ろし取り出している。ハンディーライトはヘッドライトでは見取れない凹凸を照らす必需品、なべさんのアドバイス通りだ。
「私初めてなんですが、・・・あなたもですか?」 「そうなんです、いよいよ怖い日暮れですね。安全に行くしかないですよ、お互いに。」 「長いのは参加しているんですか?」 「いわゆるウルトラには何度も」 「奥武蔵は?」 「参加ですよ、私のお気に入りですから。ビキニもね」(笑) 「私も今回で5回完走でして・・」 「あらら、同じく私もですよ。そうそうあの原始人、仲間でして・・」
偶然同じ経験をしていた不安な者同士、不安を確認し合うと少しは和らぐもの。完全にライトのお世話になるまでの僅かな時間、世間話などしながら併走、お互いの検討を祈りつつ自分のペースに戻る。いよいよ闇夜が売りのハセツネの開始となった。
すでに試走した箇所は過ぎての初コース、地図通りの比較的平坦な尾根沿いコースで、昼間なら快適なトレイルが続く。今は闇夜なので2歩前辺りを照らして集中するが、それでも僅かな木の根を斜めに踏むだけで滑りよろける。後ろから軽快にステップを踏み坂を駆け下りるツワモノが脇をすり抜ける。僅かでも道を空けるので自分のステップが狂いまた滑りよろける。あぁ怖い。
どれだけ登ったのか?どれ程下ったのか?どれ位進んだのか?全ては闇の中、判らない。手元の山用ウォッチに表示される標高を参考にし、記憶にある地図の標高と比べるのみ。そう言えば、コースの傍らで休みついでに地図を必死に読んでいる人も居た。皆「ここは何処?」と不安なのだ。
『ネオンもねぇ お先真っ暗 おら嫌だぁ』
前方から話し声と明かりが漏れて浅間峠・第一関門到着。計測マットを踏み、テント作りの臨時トイレを視察する(笑)。耐久レースなのでエイドは無く、適当な場所に座りザックをまさぐり食料など取り出し黙々と食べている。丁度夕飯時なので、自分も見習いスティック状の食料とデザート用の乾燥マンゴを食べ、水気はリザバーから吸い込む。どう考えても食事とは言えない、体内に養分を摂取しただけだ。周りを見ても暗闇の林が静かに続いているだけで「眺め」と言えるものは無い。篝火の周りでこれからの戦いに備えて兵たちが黙々と食料を食べている、そんな雰囲気だ。
未試走区間でもあるので、未踏山じゃなく三頭山を目指して動き出す。緩やかな尾根を進み少しずつ標高を上げる。次第に登りが辛くなりだして三頭山が近い事を知る。かなり頑張って腕時計の標高表示を見る、・・まだまだの数字がおぼろげに見えがっかりする。盛んに声援を送っている方の声が聞こえる、「もう直ぐ山頂か?」と期待。聞こえて来たのは「登り中盤です!頑張って!」だった。
更に辛い登りをこなし再び声が聞こえる。騙されまいと荒い息を我慢して耳を澄ますと「三?山頂です。ここで?ース?ンバーと?ップのチェックを?っています」。全部は聞き取れないもののどうやら山頂からの声の様だ。時計を見ると標高は1400m以上を示しているので本当だろう。
山頂でゼッケンとチップチェックを受け一息入れる。しかしこんな時刻にこんな場所でチェックしてくれるのだから有難い。ハセツネコース最高地点に到達した事に対してと、大会関係者に対して自然と声が出て頭が下がる「ありがとう、(ハァハァ) ございまぁす。」 何か見えるかと周囲に目をやるが、やはり「なんも見えねえ」。涙は出ないが自然とつぶやく。
「ここからは急なくだりでぇす。気をつけて降りて下さぁい!」と係員の言葉に見送られ下りだす。時折暗くなるハンディーライト、何故か叩くなどの刺激を入れると明るく戻る、眠っているのか。そんなハンディーライトが下りでは貴重な相棒、優しく壊れない様時折叩き慎重に進む。慎重過ぎると返って滑る路面も在るし、かといってスピードがちょっとでも付いてしまうと危ない場面も在る。限られた範囲で照らされた路面とその先の様子を瞬時に推測・判断するのだから疲れる。足腰も疲れるがそれ以上に目と神経が磨り減る。逃げ場は無いし暗闇だし先は長いしで、荒い息の合間にため息が漏れる。 「あぁ山岳耐久を楽しむってこう言う事なんだ」と。
『ハセツネを 楽しむコツは M精神』
下り終えて鞘口峠・ほぼ9時間経過、先週ここからの後半を試走した入り口、残り32.5km地点。先週はここから7時間で駅に着いたが、闇夜と疲労を考えればここから9時間でトータル18時間と言ったところか、などと取らぬ狸の皮算用に励んだ。
ここからの記憶は新しいのだが、かえって怖い部分・辛い部分が鮮明になって「この闇夜にあそこを通るのか・・・」と心配が先に立つ。それでも基本的に下りの方が多いのだからと鼓舞し、ここは休憩無しで進む。ここから第二関門月夜見第二駐車場まで4.5kmほど、ここで給水1.5Lを受けられる。ザックの軽さからそろそろリザーバーの飲料が無くなる頃、ペットボトルの残りと緊急用300ccを入れて残りは1Lは切っているのだろう。
片側が落ち込んでいるトラバース路を徐行歩行で通過、一部一般道に出たりして第二関門に到着、ほぼ10時間経過。すでに上位の選手は続々とゴールしている頃、FRUNでは「つかのまダッシュさん」・「やまちゃん」・「なべさん」がゴールもしくは直前なのだろう。自分はまだ30km手前、これから大岳山と言う難所が在ると言う位置、この差の大きさを思い知る。あの人達は普通じゃない、カモシカのDNAを持っているのだ。
1Lのスポドリと0.5Lの水をリザーバーに給水、照明下に陣取って栄養補給と電池交換を行う。まだまだ明るいと思っていたが知らず知らず暗くなっていたのだろう、明るく感じる。シューズに入り込んで大きな顔して暴れまくっていた小石・小枝を取り除く。更にソックスの上から足の様子を触ってみたが、別段異常はなさそう。そのほかでは、多少捻った右膝に違和感は在るものの歩行に支障は無い。これからの難所を考えれば、今まで以上に慎重に行かねばと気合を入れる。
『ハセツネは ライトと思考を 明るくGO!』
駐車場奥から粘土で滑りやすい下りを下って御前山を目指す。前方・後方からも滑った瞬間の喚声が聞こえる。ここで捻挫などしたら元も子も無い、剣山でもソールに貼り付けたいなどと冗談を思いながらも、神経を張り詰め心して進む。昨年の事故現場近く(迂回路になっている)で手を合わせ、同時に今大会の無事な終了を祈る。
闇夜の山道は目と神経がやられる。遂に目が開けていられなくなるほど痛くなって来た。もう前には進めなくなってしまった。仕方なくコース脇の笹の茂みに座り込んだ。目をつぶれば痛みは引く、暫くして少しずつ目を開くと・・またまた痛くて空けていられなくなる。何も出来ず仕方なくただ目をつぶりじっとするのみ。時たま目前に光を感じて走者が通って行くのが判る、ちょっと幻想的。睡魔も襲って来るが寝ている余裕など有ろうはずも無い。10分程瞑想?にふけってから少しだけ目を開ける。笹の茂み越しに明かりが近づき、あっという間に走者が白い息を吐きながら無言で過ぎ去って行く。ぼんやりした頭で眺めているからなのか、何ともいい辛い奇妙な光景だ。はっと我に返ると目を開けていても大丈夫になっていた。時計を見れば15分ほどの出来事だった様だ。
『ハセツネを 駆ける走者を 草葉から 眺める自分 この世の者か?』
御前山を超え、下り終えて大ダワに出る。テントが在ったのでちょっと休みたいなと近づくと「ここに入るとリタイヤ扱いとなります」旨の表示がある。外から覗くと毛布に包まって人が寝ている。ほぼ50k地点の大ダワ、此処まで来てのリタイヤだからよっぽどの事情だったのだろう。この方々の気持ちの分まで何としてでもゴールまで運ぼうと言う気持ちになる。さぁここから大岳山に向かう登りだ!
大岳山の難所はハセツネでも屈指、山頂付近の厳しい岩場の登りと下りだ。下りなどは試走の時は両手を付いてずり降りる様な所も在る。今日は闇夜の中で越えねばならいのだから一層気が滅入る。しかしここが最後の難所だと言う事も判っているので、越えた後の安堵感を思い出しながら進む。直前の人の足を目の高さに見ながら、適度な間を置き弾みを付けて岩をよじ登る。数箇所の鎖場を通過、頂上は近い。ふっと、傾斜が緩んだ所で山頂到着!
やったー!などと叫ぶ人は誰も居ない。荒れた息を整えつつ安堵の深呼吸なのか?ため息なのか?漏れ聞こえるのみ。先週は山頂から望めた山々の眺望は全く無く、深い暗闇が続くのみ。「ここも、なんも見えねぇ」と、ひとり舌打ちするのみ。ここからの危険な下りに備えて残った乾燥マンゴを頬張り、リザーバーから給水する。
リザーバーからの給水は面白い。タンクからホースが出ていて肩越しに巻き込んで口に含むのだが、最初の吸い込み3回ぐらいまでは冷えていて旨い。4回目ぐらいからは生ぬるくなってまずくなる。外気に触れているホース部分が冷えているのだ。自然と3回で吸い込みを止め、冷えるのを待ってこまめに給水する様になった。慣れれば残りの量まで推定出来るだろう。
疲れた足と疲れた目、これ程下りの難しさを味わったことは無い。例えれば、登山初心者が悲鳴を上げながら、両手を付いてお尻を滑らせながら下る様な有様。「お前、それでも男の子か!」と親父に叱咤されそうな有様だが仕方ない。暗闇に見栄は危険だ。後ろの人には「ちょっと待っててね」と言いながらヘッドライトで照らす場所を首を振って操り、リストバンドに挟んで固定したハンディーライトは手首を振って調整し、一歩・一歩と足を確実に置き、にじり降りる。
鳥居まで来ればもう安全、安堵感からかぼんやりと前走者に続くと・・トイレの前に行ってしまった。数人と笑いながら元に戻って御岳山・その前の第三関門を目指す。ここからは危険なアップダウンも無く快適となる。走るでもなく歩くでもないスピードで、時折右手に夜景が見えるのを楽しみながら進む。
第三関門を15時間(午前4:00)を切る位で休憩せずにそのまま通過、御岳神社の下では水を戴きここまでの安全を感謝する。あとは日の出山をクリアーするのみ、日の出は見られないが夜景が期待できる。時折一般登山者と行き会う、どうやら日の出山で日の出を見る様だ。近くの宿に泊まっていたのだろうか。
今までの登りからすれば穏やかな登りをクリアーして日の出山頂到着・04:25、東京方面の夜景が綺麗だ。逆に言えば、この時刻でこの明るさ、省エネとは言い難い。自分も気をつけねばと思う。
東屋に寝転んで日の出を待つ?人、最後の食料を詰め込む人、携帯電話で現況を話す人、人それぞれだが皆完走を確信した安堵感を顔に滲ませている。日の出までは1時間ほども有るので、自分は休憩をそこそこにゴールを目指す事にする。順調に行けば18時間は切れるのだから。
金毘羅尾根に出れば後は快適なトレイルが大半、下り基調だし体への負荷も神経への負担も軽くなる。おまけに食料も無くなり飲料も順調に減っているので、ザックまで実に軽い。もう直ぐ夜明けもやって来るし、明るくなれば心も晴れると言うもの。あぁ光が待ち遠しい。「光有れ!」だったか?旧約聖書だったかの最初の文が心に響く。無信教な自分にも、宗教とはこう言うものなのかと思う。
抜かれもするし抜きもしながら、パワーウォーク中心で快適に飛ばす。5:30を超えて森の中でも白んで来た事が判る。夜明けだ!目覚めの時だ!鳥のさえずりが少しずつ聞こえ出し心が躍る。先週見覚えた光景が時折目に飛び込み、確実にゴールに近づいて居る事を実感出来る。もう間も無く山道をまたぐ橋を超え、神社に出て、急な坂道を降り切れば住宅街、あっという間にゴールだ!
住宅街まで降り切って係員の誘導を受ける。今までの道程を思い起こし、その長さに耐えた自分を褒める自分が居る。一緒に苦難を共にしたヘッドライト・ハンディーライトをザックに仕舞い、ゴールでの写真撮影に備える自分も居る。あはは、人間ってこんなものなんだなぁ、面白い。
係り員がゴールアーチへ誘導する、何故か「グー」・ポーズ」が自然と出てゴールラインを超えた! 時計は 17:30:34 だった。 不思議と涙は出なかった。じーんともしなかった。唯・唯・放心状態、心が解き放たれた恍惚感のみだった。私のハセツネは無事に完結したのだった。
その時、「とらぼんさん」から声を掛けて貰い我に返った。 「FRUNの人は始発で帰ったよ」と。 「皆、無事だったんだ。ありがとう。」
『暗闇で 自分を見たり 光ったり』(むぎ) ---------------- むぎ
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第16回日本山岳耐久レース「長谷川恒男CUP」 08/10/12〜13【受付台】 (りっき, 2008-10-12 5:20)
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むぎのハセツネ (むぎ, 2008-10-17 9:04)
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完走おめでとうございます! (まりも, 2008-10-17 19:27)
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四万十、ガンバ! (むぎ, 2008-10-17 20:10)
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Re: 四万十、ガンバ! (まりも, 2008-10-20 16:17)
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おめでとう! (むぎ, 2008-10-21 9:03)
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Re: むぎのハセツネ (やまちゃん, 2008-10-18 12:43)
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Re: むぎのハセツネ (むぎ, 2008-10-18 17:30)
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相変わらず、お見事です。 (gen, 2008-10-18 22:28)
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Re: 相変わらず、お見事です。 (むぎ, 2008-10-20 13:12)
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Re: むぎのハセツネ (つもる, 2008-10-19 9:49)
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Re: むぎのハセツネ (むぎ, 2008-10-20 13:18)
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Re: むぎのハセツネ (つかのまダッシュ, 2008-10-20 16:54)
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Re: むぎのハセツネ (むぎ, 2008-10-21 8:55)
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Re: むぎのハセツネ (そうらん, 2008-10-22 0:16)
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Re: むぎのハセツネ (むぎ, 2008-10-23 10:59)
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Re: むぎのハセツネ (AKA, 2008-10-22 13:00)
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Re: むぎのハセツネ (むぎ, 2008-10-23 11:04)
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ハセツネ9回目の完走 (やまちゃん, 2008-10-18 12:26)
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Re: ハセツネ9回目の完走 (むぎ, 2008-10-18 17:39)
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Re: ハセツネ9回目の完走 (やまちゃん, 2008-10-19 14:55)
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Re: 祝やまちゃんハセツネ9回目の完走 (つもる, 2008-10-19 9:57)
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Re: 祝やまちゃんハセツネ9回目の完走 (やまちゃん, 2008-10-19 15:03)
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Re: ハセツネ9回目の完走 (つかのまダッシュ, 2008-10-20 17:04)
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Re: 第16回日本山岳耐久レース「長谷川恒男CUP」 08/10/12〜13【受付台】 (なべ, 2008-10-18 23:23)
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Re: なべさん「長谷川恒男CUP」 (つもる, 2008-10-19 10:04)
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Re: なべさん「長谷川恒男CUP」 (なべ, 2008-10-19 22:35)
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Re: 第16回日本山岳耐久レース「長谷川恒男CUP」 08/10/12〜13【受付台】 (やまちゃん, 2008-10-19 15:11)
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Re: 第16回日本山岳耐久レース「長谷川恒男CUP」 08/10/12〜13【受付台】 (なべ, 2008-10-19 22:47)
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Re: 第16回日本山岳耐久レース「長谷川恒男CUP」 08/10/12〜13【受付台】 (むぎ, 2008-10-20 13:25)
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Re: 第16回日本山岳耐久レース「長谷川恒男CUP」 08/10/12〜13【受付台】 (つかのまダッシュ, 2008-10-20 17:19)
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2回目の完走 (つかのまダッシュ, 2008-10-20 17:43)
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Re: 2回目の完走 (むぎ, 2008-10-21 8:59)
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Re: 2回目の完走 (つもる, 2008-10-21 20:48)
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Re: 2回目の完走 (やまちゃん, 2008-10-21 22:29)
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